マエダ タケヒコ   MAEDA TAKEHIKO
  前田 武彦
   所属   新潟薬科大学  薬学部 薬学科
   職種   教授
研究期間 1997~1998
研究課題 一酸化窒素を介するグルタミン酸神経毒性に対するニューロトロフィンの保護機構
実施形態 科学研究費補助金
研究委託元等の名称 日本学術振興会
研究種目名 基盤研究(B)
科研費研究課題番号 09470502
キーワード NMDA受容体, N-methyl-D-asparate, 神経細胞死, グルタミン酸, ニューロトロフィン, 神経保護, 初代培養神経細胞, 大脳皮質, 脳由来神経栄養因子, 一酸化窒素
代表分担区分 研究分担者
代表者 赤池 昭紀
概要 神経系に作用する代表的な成長因子であるニューロトロフィンのうち、大脳皮質に高発現することが知られている脳由来神経栄養因子(BDNF)の神経保護作用に注目し、グルタミン酸神経毒性に対するBDNFの作用機構の解明を目的として、ラット胎仔由来初代培養大脳皮質ニューロンを用いて研究を行った。BDNFはNMDA受容体を介するグルタミン酸神経毒性に対して強力な保護作用を発現し、その神経保護作用の効力はBDNFの投与時間と投与濃度に依存していた。最大の保護効果を得るためには24時間の前処置を必要としたこと、さらに、その保護作用は蛋白合成阻害薬により抑制されたなどの知見から、BDNFの保護作用発現には何らかの細胞内機能蛋白のde novo合成の関与することが示唆された。BDNFの受容体としては、TrkB受容体とp75受容体が知られている。ウェスタンブロッティングによる解析の結果、BDNFが培養大脳皮質ニューロンのTrkBのチロシンリン酸化を引き起こすことが明らかになった。一方、BDFNの保護作用はp75の機能を抑制する抗p75受容体抗体の投与による影響を受けなかった。さらに、p75に連関する細胞内シグナル伝達系として働くセラミドの産生は神経成長因子の投与により促進したが、BDNFの投与では変化しなかった。これらの知見をもとに、BDNFがTrkB受容体を介して何らかの細胞保護性蛋白のde novo合成を促進することにより神経保護作用を発現するとの結論に至った。NMDA受容体を介するグルタミン酸神経毒性にはアポトーシスとネクローシスの両者の関与が指摘されているが、その両方のニューロン死の過程においてNOとスーパーオキシドの関与するラジカル連鎖反応が重要な役割を果たしている。さらに、グパーキンソン病への関与が指摘されているMPTP神経毒性やアルツハイマー病への関与が指摘されているアミロイドAβ蛋白の神経毒背にもNOの関与することが報告されている。したがって、BDNFがTrkB受容体を介してNO関連ラジカルの神経毒性の制御系の機能を促進することを示す本研究の成果は、ニューロン死を伴う中枢神経疾患の予防・治療薬の創製に新しい戦略を提供するものである。