マエダ タケヒコ   MAEDA TAKEHIKO
  前田 武彦
   所属   新潟薬科大学  薬学部 薬学科
   職種   教授
研究期間 2006~2007
研究課題 ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体リガンドの新規疼痛治療薬としての可能性
実施形態 科学研究費補助金
研究委託元等の名称 日本学術振興会
研究種目名 基盤研究(C)
科研費研究課題番号 18613014
キーワード サイトカイン, 神経因性疼痛, Jak-STAT, PPAR, 疼痛, PPARγ, 神経炎症, 炎症性サイトカイン
代表分担区分 研究分担者
代表者 岸岡 史郎
概要 麻薬性鎮痛薬は高い有効性を示すが、保険適用の問題、副作用および乱用の可能性は、使用の躊躇と患者のQOL低下を招くことがある。そのため、従来より非麻薬性の鎮痛薬および鎮痛補助薬の開発が進められてきた。我々は、難治性慢性痺痛の一つである神経因性痺痛(NP)に神経炎症が関与すること、ならびに核内受容体であるベルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)リガンドが抗炎症作用を有することに着目し、NPにおけるPPARγの役割について検討した。マウス坐骨神経(SCN)の部分結紮(PSL)により触アロディニアを呈するNPモデルを使用した。PSLによりSCN組織において、Jak-STAT系のシグナル分子であり、活性型であるSTAT3リン酸化体(pSTAT3)、炎症生サイトカインであるIL6およびTNFα、ならびにPPARγの発現量が増大した。それらの発現は、PSLによりSCN組織に集積するマクロファージにおいて観察された。Jak-STAT系阻害薬であるAG490、ならびにIL6およびTNFαの中和抗体の投与は、PSLによる触アロディニア形成を抑制した。2型糖尿病治療薬として利用されているPPARγ作動薬ピオグリタゾンの投与はSCNにおけるpSTAT3、IL6およびTNFαの発現量増大を減弱するとともに、触アロディニアの形成を抑制した。以上の結果より、PSLによる炎症性サイトカインの産生元進とその細胞内シグナルの一つであるJak-STAT系の活性化は、疼痛反応の形成に寄与すること、そしてPPARγ活性化はそれらを抑制することが明らかとなった。本研究成果には、慢性疼痛を制御する新規分子を同定したところに学術的意義と重要性がある。さらに、臨床使用の実績があり、安全性が確立されているピオグリタゾンが鎮痛薬の有望なシーズである可能性を提示することにより、社会的および経済的波及効果が期待できる。